令和3年度 厚生労働科学研究費補助金
:補装具費支給制度等における適切なフォローアップ等のための研究(20GC1012)

研究背景

 障害のある方にとっての補装具は日々の生活を送るうえで欠かせない用具である。しかし、不適切な補装具や破損した補装具を使用し続けている方、どこに相談をしたらよいのかわからないといった方等がいる状況が生じている。各利用者にとって必要な補装具を適切に評価して支給すること、さらにはこうした補装具が適切に、かつ継続的に使用されることは、利用者の利便性向上に直結するとともに、公費の効率的な運用にもつながる。

研究目的

 健康保険制度を用いて装具処方を行う病院、障害者総合支援法による支給を行う身体障害者更生相談所、実際に補装具を提供する製作事業者などにおける治療用装具や補装具の支給とフォローアップの現状を調査し、課題を明らかにする。多機関、多職種が役割分担しながら、補装具の適切な支給とフォローアップを実施できるモデルを作成し、効果検証を行うことを目的とする。

結果概要

 更生相談所の調査では、補装具のフォローアップの実施経験のある更生相談所は、そのほとんどが効果や今後の必要性、地域連携の重要性を認識していた。北九州市では補装具管理手帳の配布を実施し、補装具管理手帳およびフォローアップに関するアンケート調査と支援者向けの講習会を実施した。アンケート調査では、医療従事者の大多数が補装具のフォローアップの必要性を認識していた。
 千葉県内の地域リハビリテーション広域支援センターを対象としたアンケート調査では、広域支援センターにおける在宅での装具のフォローアップの実施率が低かった。
 ユニークな試みを行っている補装具製作事業者へのヒアリング調査では、意欲的な事業者も多かったが、マンパワーやコストの問題が避けられない障壁となっていた。
 義手利用者に対する「義手オンラインミーティング」を開催し、利用者の情報や交流への需要の高さがうかがえた。
 利用者と多職種の支援者によるワークショップを開催し、補装具フォローアップシステムに関わる課題について意見を出し合った結果、情報アクセスや利用者自身の意識に対する方策が必要であることがわかった。
 補装具のフォローアップに関する更生相談所、地域の医療機関、補装具製作事業者、市町村、リハ専門職等の地域の社会資源との連携、システム作りなどの課題に対し、更生相談所が主体となった支援者への教育やフォローアップの実施、利用者交流の場の設定などの具体的方策を提案できたことは意義があると考える。次の段階で必要とされるのは、これらの方策を利用した地域レベルでの仕組みを構築することである。