令和4年度 厚生労働科学研究費補助金
:補装具費支給制度等におけるフォローアップ体制の有効性検証のための研究(22GC1010)
研究背景
令和2から3年度に実施した「補装具費支給制度等における適切なフォローアップ等のための研究(20GC1012)」では、治療用装具や補装具の支給とファローアップに関して種々の取り組みが各地でなされていることが明らかとなった。
しかし、多くの地域では不適切な補装具を使用し続けている方、どこに相談をしたらよいのかわからない方等がいる状況が続いており課題は山積している。フォローアップが地域全体の仕組みとして確率しておらず、限られた機関や個人の努力で行われている段階と言ってよい。
先の研究の成果として、われわれは先駆的な事例を参考にフォローアップを行うための具体的な方策を作成した。次の段階で必要とされているのは、これらの方策を利用した地域レベルでの仕組みを構築することである。
研究目的
補装具の適切なフォローアップ等に関する有効性のある対応案を構築することを目的とする。数か所の自治体・更生相談所、および補装具製作事業者において具体的なフォローアップ方策を試行し、併せて利用者支援の方策を具体化するとともに、試行結果を検討し方策を修正する。その上で、これら方策を利用するために各関係機関に求められる相談支援体制やIT環境などについても検討を行い、支給からフォローアップまで実施できるモデルを提案する。
結果概要
更生相談所が主体となって補装具のフォローアップに関与する手法として、宮城県、横浜市、北九州市における実践を明示し、有効性を検証した。宮城県の調査からは、補装具フォローアップの機会が定期的に与えられることは利用者にとって有用であり、事業者も行政が要になって行う補装具フォローアップに対して協力的な意向が多いことが明らかとなった。一方で、自治体の業務負担や事業者への対価の問題は大きかった。横浜市における既存の地域リハビリテーション協議会の仕組みを利用した検討会の実施は、他の地域においても設置・開催が可能と思われ、有効な手法のひとつとなりうると考えた。北九州市の補装具管理手帳の有用性は高いが、さらなる普及を図るためには、計画的・継続的な支援が必要である。また、補装具に関する研修会は継続して実施し、補装具制度やフォローアップの必要性の認識を広める必要があると考えた。
回復期リハビリテーション病院では、退院後の外来診療そのものが実施しにくい現状があり、制度上の改善や関係機関との連携が求められた。利用者啓発・支援の観点から、障害当事者による補装具の有効利用の促進を目的に、第4回の義手ミーティングを実施した。過去3年間にわたって実施してきた義手ミーティングの参加者等の分析を行い、医療職を通じた情報提供と動画配信サイト等を利用した情報共有の場を有効活用する必要があると考えた。また、補装具のフォローアップにおいて更生相談所や製作事業者等が体制を整えたとしても、利用者自身が自分の補装具不具合等に気づくことが適切な対応につながる可能性を高めることは明らかである。利用者に対する資料作成をする目的で、医療安全の考え方を取り入れ、「患者参加型医療」に関する資料の検討も実施した。